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ひまわり朗読会 [言葉の力]

 先日、市の図書館で朗読会の発表会がありました。

お誘いを受けて拝聴しに行って来ました。

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フルートの奏でる優しい音色に乗ってプログラム1~から7までが、詠まれました。

中でも1番始めに詠まれた詩<忘れられない贈り物>というスーザン・パーレイ作、

には、大きく胸を打つものがありました。

 

忘れられない贈り物 <スーザン・パーレイ>

 アナグマは、賢くて、いつも皆に頼りにされています。
困っている友達は、誰でもきっと助けてあげるのです。
それに、大変年をとっていて、知らない事は無いという
ぐらい、物知りでした。アナグマは、自分の年だと、死ぬ
のが、そう遠くはないことも、知っていました。
 
 アナグマは、死ぬことを恐れてはいません。死んで体が
無くなっても、心は残ることを、知っていたからです。だ
から前のように、体がいうことをきかなくなっても、くよ
くよしたりしませんでした。ただ後に残していく友達のこ
とが、余り悲しまないようにと、言っていました。

 ある日のこと、アナグマは、モグラとカエルのかけっこ
を見に、丘に登りました。その日は、特に年をとったよう
に思いました。あと一度だけでも、皆と一緒に走れたらと
思いましたが、アナグマの足では、もう無理なことです。
それでも友達の楽しそうな様子を、眺めているうちに、幸
せな気持ちになりました


 夜になって、アナグマは、家に帰ってきました。月にお
やすみを言って、カーテンを閉めました。それから、地下
の部屋に、ゆっくり降りていきました。そこでは、暖炉が
燃えています。夕ご飯を終えて、机に向かい、手紙を書き
ました。揺り椅子を暖炉のそばに引き寄せて、静かに揺ら
しているうちに、アナグマは、ぐっすり寝入ってしまいま
した。そして、不思議な、でも、すばらしい夢を見たのです。
 
 驚いたことに、アナグマは、走っているのです。目の前
には、どこまでも続く長いトンネル。足はしっかりとして
力強く、もう、杖もいりません。体はすばやく動くし、ト
ンネルを行けば行くほど、どんどん早く走れます。とうと
う地面から浮きあがったような気がしました。まるで、体
が無くなってしまったようなのです。アナグマは、すっか
り自由になったと感じました。

 次の日の朝、アナグマの友達は、皆心配して集まりまし
た。アナグマが、いつものように、おはようを言いに来て
くれなかったからです。キツネが、悲しい知らせを伝えま
した。アナグマが死んでしまったのです。そして、アナグ
マの手紙を、皆に読んでくれました。
「長いトンネルの向こうに行くよ。さようなら。アナグマより。」
森の皆は、アナグマを愛していましたから、悲しまない者
は、いませんでした。中でも、モグラは、やりきれないほ
ど、悲しくなりました。

 ベッドの中で、モグラは、アナグマのことばかり、考え
ていました。涙はあとからあとから頬を伝い、毛布をぐっ
しょり、濡らします。その夜、雪が降りました。冬が始ま
ったのです。これからの寒い季節、皆を暖かく、守ってく
れる家の上にも、雪が降り積もりました。

 雪は、地上をすっかり覆いました。けれども、心の中の
悲しみを、覆い隠してはくれません。アナグマは、いつで
も、そばにいてくれたのに。皆は、今どうしていいか、途
方に暮れていたのです。アナグマは、悲しまないようにと
いっていましたが、それは、とてもむずかしいことでした。
春が来て、外に出られるようになると、皆互いに行き来し
ては、アナグマの想い出を語り合いました。

 モグラは、ハサミを使うのが上手です。一枚の紙から、
手をつないだモグラが、切り抜けます。切り抜き方は、ア
ナグマが、教えてくれたものでした。初めのうち、なかな
か紙のモグラは、つながらず、ばらばらになってしまいま
した。でも、しまいに、しっかりと手をつないだモグラの
鎖が、切り抜けたのです。その時のうれしさは、今でも、
忘れられない想い出です。

 カエルは、スケートが得意です。スケートをはじめてア
ナグマに習った時のことを話しました。アナグマは、カエ
ルが一人で立派に滑れるようになるまで、ずっとやさしく、
そばについてくれたのです。

 キツネは、子供の頃、アナグマに教えてもらうまで、ネ
クタイが結べなかったことを、思い出しました。「幅の広
い方を左に、狭い方を右にして首にかけてごらん。それか
ら、広い方を右手でつかんで、狭い方のまわりにぐるりと、
輪を作る。輪の後ろから前に、広い方を通して、結び目を、
きゅっとしめるんだ。」キツネは今、どんな結び方だって
できますし、自分で考え出した結び方もあるんです。そし
ていつも、とても素敵に、ネクタイを結んでいます。

 ウサギの奥さんの料理上手は、村中に知れ渡っていまし
た。でも、最初に料理を教えてくれたのは、アナグマでし
た。ずっと前、アナグマは、ウサギにしょうがパンの焼き
方教えてくれたのです。ウサギの奥さんは、初めて料理を
教えてもらった時のことを思い出すと、今でも、焼きたて
のしょうがパンの香りが、漂ってくるようだと言いました。

 皆誰にも、何かしら、アナグマの想い出がありました。
アナグマは、一人一人に、別れた後でも、宝物となるよう
な、知恵や工夫を残してくれたのです。皆はそれで、互い
に助け合うこともできました。

 最後の雪が消えた頃、アナグマが残してくれたものの豊
かさで、皆の悲しみも、消えていました。アナグマの話が
出るたびに、誰かがいつも、楽しい想い出を、話すことが
できるように、なったのです。ある暖かい春の日に、モグ
ラは、いつかカエルとかけっこをした丘に登りました。モ
グラは、アナグマが残してくれた、贈り物のお礼が言いた
くなりました。 「ありがとう、アナグマさん。」モグラ
は、なんだか、そばでアナグマが、聞いていてくれるよう
な気がしました。そうですね。きっとアナグマに、聞こえ
たに違いありませんよね。

この詩の中で文字色を変えた部分が特に、感動的でした。

目の周りがジーンとしてきました。自由になるという表現に

揺さぶられるものを感じました。

穏やかな昼下がり素敵なひと時を過ごせた事に感謝です。

そのほかにも<葉っぱのフレディ>  昨今メディアでも取り上げられている

加島祥造作の<求めない>など 「命の大切さ」「やさしい心」をテーマとした

                                  作品の朗読の発表がありました。 

 


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littleducks

たくさんの動物の仲間、助け合って生きていくのですね。
by littleducks (2010-11-26 23:52) 

向日葵

「生きる」勇気を与えられますね。

「生きる」のも、案外「良いこと」かもしれません。
「死」も、「生きる」と表裏一体で、さほど恐れることは無く、
また、「生きる」こととある意味「同義」なのかもしれませんね。。
by 向日葵 (2010-11-27 00:46) 

青い鳥

「死んで体が無くなっても、心は残る」、
アナグマさんが知っていた通り、
アナグマさんは亡くなっても他の動物達に生きていく為の知識を伝え
思い出を残したのですね。
私達もこのようにありたいものです。
by 青い鳥 (2010-11-27 13:21) 

むらさき

littleducksさま
人間社会もこうありたいですよね。
人間である限り戦いはとめられないのかと思ってしまいす。

向日葵さま
座禅会の和尚さんが行って見えました。
瑞から見ると凄く苦しんで見えても 本人はふっといい気分に
なる事を、手術した時、経験したと・・・・・・
向日葵さんの言われるとおりかも知れないですね。

青い鳥さま
このお話は本当に感動的でした。 私がこのごろ想うことと
ぴったり一致した気がして、涙が出ました。
ちょっと 恥ずかしかったです。
生きた証をこんな形で残せたら嬉しいですけど・・・・・・
by むらさき (2010-11-27 20:46) 

むらさき

Greenさま  いうりん様  eternity様  yayu-changさま
nice!ありがとうございました。^^


  

by むらさき (2010-11-27 20:50) 

旅爺さん

朗読会って聞いたことないのですが、楽しめそうですね。
私の友人が高校時代にアナグマと戦ったのを思い出しました。
by 旅爺さん (2010-11-28 15:53) 

むらさき

え! アナグマと戦ったんですかぁ^_^;
で 勝利の栄冠はどちらに・・・・・。

色々なサークル活動があるんですよ。
フラダンスも市のサークルとしてあるのですが、まだ再会できない
のが残念!!
by むらさき (2010-11-28 21:25) 

旅爺さん

友人ッはアナグマと戦って引き分けでした。凄い山男なんです。
フラダンスは踊るだけで運動にもなり楽しいですね。
by 旅爺さん (2010-11-29 05:44) 

むらさき

ご無事で良かったですねぇ。最近は思いがけないところに
熊などが出没したりしています。旅じいさんもお気をつけくださいね。^^

by むらさき (2010-11-29 20:20) 

むらさき

ぼんぼちぼちぼち様
umikoさま
nice!ありがとうございます。

by むらさき (2010-12-02 20:24) 

kimiko

容姿(カタチ)は地上で生きる間の仮のすがた…?そんな気がするこの頃。。^^
ワタシの周りでは、なぜか惜しまれる人ほど逝ってしまわれるのが早いような。。
心に沁みいる素敵な朗読会。多感な幼少期にこうゆうお話を沢山聞けるといいですね~

サイドバーにいる”ぺそぎんくん”可愛いですねー♪
さっき、呼びだしたら、ドジョウすくいを踊ってくれました(笑)
スイカの種ペッぺッてしながら食べまくってましたよ~(≧m≦*)ププ
by kimiko (2010-12-04 11:58) 

むらさき

kimiko さま
コメント気づかずで失礼しました。ありがとうございます。
<容姿(カタチ)は地上で生きる間の仮のすがた…?>
私も凄く凄く そう思います。 この世はちょっと通り過ぎるだけ??
なんて・・・・ 今だから感じられる事もたくさんありでした。

ぺそぎんくん 楽しんでいただけてうれしいです。
私も、時々呼び出しては楽しんでます^^

nonkoさま
nice!ありがとうございます

by むらさき (2010-12-10 20:48) 

あら!みてたのね

こんにちは・・・遅くなりました。
感情を込めて物語をフルートの音色をバックに読み聞かせる朗読会は経験がありませんが、自分で物語を読むのと違った心にうったえる力があるのでしょうね。
読ませていただいて、地域紛争、北だ、南だと無意味に争う人間社会に警鐘を鳴らしているように思います。




by あら!みてたのね (2011-01-02 11:52) 

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